
学童保育とは?
働く女性が増えたり、核家族が増えているなかで、共働き家庭や母子・父子家庭などでは、小学生の子どもたちは、小学校から帰った後の放課後や、春休み・夏休み・冬休みなどの学校休業日には、親が仕事をしているために子どもだけで過ごすことになります。
このような共働き家庭や母子・父子家庭の小学生の子どもたちの毎日の放課後(学校休業日は一日)の生活を守る施設が学童保育です。学童保育に子どもたちが入所して安心して生活が送ることができることによって、親も仕事を続けられます。学童保育には親の働く権利と家族の生活を守るという役割もあります。
学童保育に通う子どもたちは、そこを生活を営む場所として学校から「ただいま」と帰ってきます。学童保育では、家庭で過ごすのと同じように、休息したり、おやつを食べたり、友達とも遊びます。宿題もしたり、お掃除をしたり、学童保育から友達の家や公園に遊びに行きます。学童保育に一度帰ってきて塾に行く子もいます。学童保育は子どもたちにとって「放課後の生活の場」そのものなのです。
今日、共働きや・母子・父子家庭などが増え、「働くことと子育てを両立したい」との願い広がり、「うちの地域にも安心して子どもを入れられる学童保育がほしい」という声はますます大きくなっています。
学童保育は地域によっていろいろな呼び名があります。地方自治体によっては、「学童クラブ」「児童クラブ」「留守家庭児童会(室)」 「児童育成会(室)」「子どもクラブ」「児童ホーム」など呼び名はさまざまです。
国(厚生省)は、学童保育を必要とする児童を「放課後児童」、学童保育のことを「放課後児童クラブ」と呼んでいます。
学童保育の歩み
1962年(昭和37年) | 東京の学童保育連絡協議会発足 |
1964年(昭和40年) | 東京の学童保育関係者が第1回の学童保育研究集会を開催 |
1966年(昭和41年) | 文部省が留守家庭児童会補助事業を開始 (300か所、予算5000万) |
1967年(昭和42年) | 第2回学童保育研究集会に参加した各地の関係者で全国学童保育連絡協議会(以下、全国連絡協議会)発足(以後、毎年、全国連絡協議会が全国研究集会を開催) |
1971年(昭和46年) | 文部省は留守家庭児童会補助を71年度で打ち切り「校庭開放事業」に統合。 |
1972年(昭和47年) | 東京都が3か年計画で学童保育指導員の正規職員化を決定 |
1973年(昭和48年) | 全国連絡協議会が国に制度化を求める第1回国会請願(署名数8万余名) |
1974年(昭和49年) | 総理府『婦人問題総合調査報告書』が学童保育の制度化を提言/全国連絡協議会編集『日本の学童保育』創刊(隔月刊)/国会で厚生大臣が75年度予算で制度化の努力を約束/国会内で映画『放課後の子どもたち』が上映される。 |
1975年(昭和50年) | 厚生省が76年度概算要求で計上した都市児童健全育成事業「児童育成クラブ」4億700万円が大蔵査定でカットされたが、復活折衝で1億1700万円が復活/全国連絡協議会が国に制度化を求める第2回国会請願(署名数22万余名) |
1976年(昭和51年) | 都市児童健全育成事業「児童育成クラブ」の創設(事実上の学童保育への国庫補助開始)/全国連絡協議会が第1回全国指導員学校を開催(以後、毎年、開催) |
1977年(昭和52年) | 『日本の学童ほいく』月刊化/全国連絡協議会が国に制度化を求める第3回国会請願(署名数28万余名) |
1978年(昭和53年) | 第84国会で学童保育制度化請願採択(衆議院・参議院) |
1979年(昭和54年) | 全国連絡協議会が国に制度化を求める第4回国会請願(署名数37万余名) 第91国会参議院で学童保育制度化請願採択(衆議院は解散) |
1982年(昭和57年) | 全国連絡協議会が学童保育実態調査 |
1985年(昭和60年) | 全国連絡協議会が国に制度化を求める第5回国会請願(署名数100万余名)第104 国会で学童保育の制度化請願採択(衆議院・参議院) |
1987年(昭和62年) | 全国連絡協議会が学童保育実態調査 |
1989年(昭和63年) | 1.57ショック(合計特殊出生率が1.57) |
1990年(平成2年) | 全国連絡協議会が厚生省に署名数102万余名を添えて「学童保育の制度化」要請/政府が「健やかに子供を生み育てる環境づくりに関する関係省庁連絡会」設置 |
1991年(平成3年) | 厚生省が「児童育成クラブ」事業を発展的に解消して放課後児童対策事業(児童クラブ事業)を創設 |
1993年(平成5年) | 総合研究開発機構(NIRA)「学童保育の制度化」提言/子供の未来21プラン研究会報告(学童保育の法制化の必要性を提言)/「子どもの権利条約」批准、発効/厚生省が学童保育の法制化を検討/全国連絡協議会が学童保育実態調査 |
1994年(平成6年) | 中央児童福祉審議会の部会が学童保育の法制化を意見具申/全国連絡協議会が厚生省に対して法制化に関する要望書提出/政府が「今後の子育ての支援のための施策の基本方向」(エンゼルプラン)を策定したのを受けて厚生省・大蔵省・自治省が「緊急保育対策等5か年事業」策定(放課後クラブを1999年に9000か所まで補助する計画)/全国連絡協議会が「ひとりひとりの声を国に届ける」運動を展開(厚生省に2700人の父母・指導員の声を届ける) |
1995年(平成7年) | 厚生省「コミュニティー児童館」事業(学童保育専用の施設への補助)創設/厚生省が「地域児童育成計画指針」(地方版エンゼルプラン指針)策定 |
1996年(平成8年) | 中央児童福祉審議会基本問題部会が学童保育の法制化の必要性を盛り込んだ中間報告をまとめる/全国連絡協議会が『学童保育の制度確立を-私たちの提言をまとめ厚生省などへ要望。また内閣総理大臣と厚生大臣に「学童保育のよりよい制度化を」を要望、署名を提出(署名数65万余名) |
1997年(平成9年) | 第140国会で児童福祉法等の一部改正により学童保育が「放課後児童健全育成事業」として法制化される |
1998年(平成10年) | 4月から学童保育の法制化施行 |
当初、学童保育は、必要とする人々が自分たちで行っていました。それがだんだんと普及・定着し、市町村が行うもの、法人が行うもの、運営委員会が行うもの、父母が自分たちで行うものなど、現在のような多様な形態になってきています。
日本における学童保育の歴史
私たちは、憲法や児童福祉法の精神から見て学童保育は国の制度として児童福祉法に明記されることが当然と考えてきましたが、残念ながら今日まで学童保育を直接規定する法律はありませんでした。
働く親たちが自治体に学童保育の設置を要望しても「法律にもないものはできない」と断られたり、共同保育に補助金を要望しても「みなさんが勝手にやっているものだから出せない」といった対応に、私たちはくやしい思いをしてきたものです。
しかし、1997年6月に「児童福祉法等の一部改正に関する法律」が成立し、学童保育がはじめて法制化されることになりました。1998年4月より学童保育は児童福祉法と社会福祉事業法に位置づく事業となります。
学童保育は、「放課後児童健全育成事業」という名称で、「国と地方自治体が児童の育成に責任を負う」(第2条)と定めている「児童福祉法」にはっきりと明記されるものになりました。これは学童保育が、「親たちが勝手にやっている事業」ではなく、「公(おおやけ)の事業」として認知されたことであり、これからは国および自治体も児童福祉法に根拠をもつこの事業の推進に責任を持たなければならないことになったということです。
児童福祉法とは
児童福祉法は、国の「児童の福祉を保障するための原理」(第3条)と定めているように日本の児童福祉関係法令のもっとも基本的な法律です。 第1条1項では「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」、同第2項で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」としています。
また、第2条では「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」として、児童福祉の担い手として国と地方公共団体の責任を明確にしています。
1998年4月1日から施行される新しい児童福祉法では以下のように明記されました。
児童福祉法
- 第6条の2第6項
- この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。
- 第21条の11
- 市町村は、児童の健全な育成に資するため、第6条の2第6項に規定する児童の放課後児童健全育成事業の利用に関し相談に応じ、及び助言を行い、並びに地域の実情に応じた放課後児童健全育成事業を行うとともに、当該市町村以外の放課後児童健全育成事業を行う者との連携を図る等により、当該児童の放課後児童健全育成事業の利用の促進に努めなければならない。
- 第34条の7
- 市町村、社会福祉法人その他の者は、社会福祉事業法の定めるところにより、放課後児童健全育成事業を行うことができる。
- 第49条
- この法律で定めるもののほか、児童居宅生活支援事業及び放課後児童健全育成事業並びに児童福祉施設の職員その他児童福祉施設に関し必要な事項は、命令で定める。
- 第56条の6の2
- 児童居宅生活支援事業又は放課後児童健全育成事業を行う者及び児童福祉施設の設置者は、その事業を行い、又はその施設を運営するに当たっては、相互に連携を図りつつ、児童及びその家庭から相談に応ずることその他地域の実情に応じた積極的な支援を行うように努めなければならない。
社会福祉事業法
- 第2条の3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする
- 2児童福祉法にいう児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業、児童自立生活援助又は放課後児童健全育成事業、同法にいう助産施設、保育所、児童厚生施設叉は児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談する事業。
「子どもの権利条約」との関係は?
1994年4月に日本も批准した国連の「子どもの権利条約」は、第3条に「児童の最善の利益」を考慮されなければならないと定めてあります。また、第18条の3項では「父母が働いている児童」に対して保育の措置をとらなければならないと定めてあります。日本は締約国としてこの法律を実行するよう努める義務を負っています。
今回、法制化することを決めた国会審議のなかで、厚生省児童家庭局長も、「児童の権利条約の『児童の最善の利益を考慮する』という観点も踏まえて、父母が働いている児童に対してサービスの提供をおこなうことを規定したもので、同条約の理念を踏まえたものと考えている」と答弁しています。したがって、国もこの立場で学童保育の制度の拡充を図ることが求められています。(全国学童保育連絡協議会より抜粋)